歯周病は、歯を支えている土台を破壊する生活習慣病です。知らないうちに進行し、症状が悪化するまで自覚しにくい病気です。放置しておくと、歯茎が腫れ、膿が出たり、激しい痛みや口臭が出たりします。最終的には、歯がグラグラし抜け落ちてしまいます。
また、最近の報告では、歯周病(歯槽膿漏)は、さまざまな全身の病気を引き起こすことがわかってきました。
1.脳梗塞
重度の歯周病がある場合は、歯周病のない人に比べて脳梗塞を発症する危険が高いことが報告されています。
2.低体重児出産
重度の歯周病をもつお母さんは、健康なお母さんと比較して低体重児出産の可能性が高くなると報告されています。
3.糖尿病
糖尿が歯周病を悪化させることは以前から報告されてきましたが、現在では、歯周病が糖尿病を悪化させると言う、相互の影響が指摘されています。歯周病の治療をすることで、糖尿病患者における血糖コントロールが改善されたという報告もされています。
4.誤嚥性肺炎
高齢者、特に寝たきりの方など体力減弱している人は、嚥下機能も弱っているため、歯周病原菌などが肺に侵入して肺炎を起こす危険が高くなることが報告されています。
5.細菌性心内膜炎
お口の中の歯周病原菌は組織に対して付着能力も高いものもあるため、心臓の弁やその周囲に感染して心膜炎を起こす危険が高くなることが報告されています。
6.狭心症・心筋梗塞
重度の歯周病のある人ほど、心身症や心筋梗塞などの冠状動脈硬化による心臓疾患になる危険が高くなることが報告されています。
◆応急処置
痛みがあったり、被せ物が外れたりなど緊急性のあるものから優先して処置します。
◆検 査
X線写真、歯周ポケットの測定、歯肉からの出血、動揺度、噛み合わせ等の検査、生活習慣のチェック、歯周病原菌の検査等をさせて頂き、情報を集めます。
◆インフォームドコンセント
検査の結果から、現在の歯周病の状況やどのように治療していくかを説明いたします。その後、患者さまの理解と希望をいただいてから治療に入ります。歯周病は生活習慣病なので、患者さま自身の理解が非常に大切で、治療の成否を握ると言っても過言ではないのです。
◆治 療
本格的な治療開始です。歯周病は患者さん自身と歯科医、歯科衛生士が協力して治していきます。この初期治療では歯周病の最大原因であるプラーク、あるいは歯石を取り除き、歯肉(歯ぐき)の炎症の改善を図ることを第一とし行われます。
磨き残しをチェックし、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス等の正しい使い方を指導させて頂きます。しっかり磨いたつもりでも、磨き残しは思った以上にあるものです。
歯石を取っていきます。ポケットの深い所は、麻酔が必要な場合があります。全部の歯が歯周病に罹患している場合、通常4〜6回に分けて歯石を取っていきます。
虫歯の治療、噛み合わせの調整、保存不可能な歯の抜歯、不良な被せ物の除去、象牙質知覚過敏症の処置、等を行います。
◆再評価<改善がなければ初期治療から始めます>
初期治療後に一定期間待ち、その治療効果を判定のために再検査します。検査結果を元に、今後の見通しを説明させて頂きます。初期の歯周病の方はここまでで治ってしまい、定期検査に入ります。深い歯周ポケットが残っている方は、必要に応じて歯周外科手術を行います。
◆メインテナンス
患者さまの状態によって異なりますが、3〜4ヶ月に1回メインテナンスにお越しいただきます。詳しくは予防歯科のページをご覧下さい。
衛生士より皆様へ
歯周病は生活習慣病であり、ある程度進行しないと強い自覚症状を表しません。そのため、歯周病の進行に気付いていない人が多くいます。初期には歯肉が少し腫れて出血がしやすくなる程度ですが、中等度以上となると歯肉が膿をもって腫れたり、退縮したり、歯が動きだしたりと、痛みをともなう症状が現れてきます。
重度ともなると歯はグラグラになり食物を噛もうにも、痛くて噛めなくなってしまいます。最後には自然に抜けてしまいます。歯が1本だけそうなるならまだ我慢もできるかも知れませんが、歯周病の進行は一般的に全ての歯に波及します。
歯の形態によって、進行しやすい歯・進行しにくい歯、という差はありますが、大切な自分の歯を守るために、患者さんにはなるべく早くお口の現状を把握し、正しい歯科知識を身につけて頂きたいと願っております。
歯を失った後に、自分の歯で食事ができる幸せを実感してからでは、遅いのです。1本1本を自分の財産だと思い、大切にしてください。
そして、もしあなたが少しでも症状をお感じになられたのであれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。
早期であればあるほど、あなたの歯と、そして全身の健康を助けることができるのですから。